足柄エリアとは?箱根のとなりに広がる、知られざる里山の魅力
「足柄」と聞いて、東名高速の足柄サービスエリアを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。
でも、今回ご紹介する「足柄」は、高速道路の話ではありません。
神奈川県の西部、箱根の隣に広がる南足柄市・大井町・松田町・山北町・開成町・中井町——この6つの市町からなる足柄エリアの里山観光の魅力をお伝えします。
早春、松田の丘を河津桜が淡いピンクに染め始めると、足柄にひと足早い春がやってきます。杉並木から漂う土と木の香り、山あいに響く沢の音——箱根の華やかさとは違う、五感で味わう静かな観光がここにはあります。
東京から電車で約80分。日帰りでも十分楽しめて、1泊すれば600年の歴史を刻む禅寺から丹沢の秘湯まで、足柄観光の奥深さにたっぷり触れられます。
この記事では、そんな足柄エリアの全体像を、地元の目線でお伝えします。
⚠️ 自然スポット訪問時のご注意: 足柄エリアには山岳・渓谷・滝など自然スポットが多くあります。訪問時は天候を事前に確認し、歩きやすい靴・十分な水分をご用意ください。山間部では熊鈴の携帯も推奨します。緊急時は110番(警察)または119番(消防・救急)へご連絡ください。
そもそも「足柄エリア」とは?― 箱根の隣に広がる6つの町
📍 足柄エリア 6市町マップ
※ Google Mapsで6市町の位置関係・ルート検索・現在地からのナビが利用できます。
足柄エリアは、神奈川県の西部、箱根の西隣に広がる里山地域です。
酒匂川の清流と丹沢山系の山並みに育まれた6つの市町——南足柄市、松田町、山北町、開成町、大井町、中井町。それぞれ人口1万〜4万人ほどの小さな町ですが、禅寺あり、温泉あり、キャンプ場あり、お茶畑あり。一つひとつの町に、箱根や鎌倉にはない「静かだけど、ちゃんと豊かな暮らし」があります。
箱根が日本有数の観光地として年間約2,000万人(箱根町観光客実態調査、2024年)を集めている一方、その隣の足柄エリアを訪れる人はまだ多くありません。でも、それこそがこのエリアの魅力でもあります。混雑とは無縁の、ゆったりとした時間が流れている場所です。
東京からのアクセス — 思ったより近い足柄観光
足柄エリアは、想像しているよりずっとアクセスが良い場所です。日帰りでも十分に楽しめます。
| ルート | 所要時間 | 料金目安 |
|---|---|---|
| 🚗 車(東名高速 → 大井松田IC) | 約75分 | 高速料金 約2,000円 |
| 🚃 電車(新宿 → 小田急線 → 新松田駅) | 約80分 | 片道 約800円(IC利用) |
| 🚃 電車(新宿 → 小田急 → 小田原 → 大雄山線 → 大雄山駅) | 約100分 | 片道 約1,210円(IC利用) |
| 🚗 箱根から(はこね金太郎ライン経由) | 約30分 | 無料 |
アクセスのポイント: Suica/PASMOなどの交通系ICカードがあれば、小田急線も大雄山線もタッチで乗車できます。紙の切符を買う必要はありません。
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2021年に開通した「はこね金太郎ライン」によって、箱根の仙石原エリアから南足柄まで車で約30分で行けるようになりました。箱根旅行の帰りにふらっと立ち寄る——そんな楽しみ方もできます。
大雄山最乗寺へのアクセス: 大雄山駅からは伊豆箱根バス「道了尊(どうりょうそん)」行きに乗車、約10分(運賃300円、IC対応)。20〜30分間隔で運行しています。歩く場合は駅から約25分。
足柄はなぜ「知られざる」のか?― 箱根の影に隠れた歴史
実は足柄は、歴史的に見ると「知られざる」どころか、日本の交通史において極めて重要な場所でした。
古代から中世にかけて、東海道が箱根ではなく足柄峠を通っていた時代があります。奈良・平安時代の旅人たちは、足柄峠を越えて東国(関東)に入りました。日本最古の歌集「万葉集」にも足柄は詠まれ、足柄の関は東と西を分ける重要な境界でした。
また、この地は金太郎伝説の舞台でもあります。坂田金時(金太郎のモデル)は南足柄で育ち、足柄山の自然の中で動物たちと相撲を取ったとされています。南足柄市内には今も金太郎の生家跡や遊び石が残っていて、マンホールの蓋にまで金太郎が描かれるほど、町のシンボルとして大切にされています。
歴史好きの方にはもう一つ。明治4年(1871年)には「足柄県」が設置され、現在の神奈川県西部と静岡県東部をまとめる広大な県だった時代もあります(1876年に廃止)。それほどに重要な地域だったのです。
では、なぜそんな由緒ある土地が「知られざる」存在になったのか。
答えは簡単で、近代以降、箱根が温泉リゾートとして圧倒的に発展したからです。箱根に観光客が集中するなかで、足柄はいつしか「箱根の通り道」になっていきました。
けれども、その分、開発されすぎていない里山の風景がそのまま残っているのも事実です。
大雄山線に乗って終点の大雄山駅に降り立つと、まず驚くのは、その静けさです。観光地の最寄り駅とは思えないほど穏やかな空気が流れていて、それだけで「ああ、ここはいい場所だな」と感じます。
足柄エリア 6つの町、それぞれの顔
足柄観光の魅力は、6つの町がそれぞれまったく違う「顔」を持っていること。ここでは、各町のエッセンスをお伝えします。
南足柄市 ― 金太郎のふるさと、禅寺と滝の町

南足柄観光の拠点となる町。人口約4万人。
600年以上の歴史を持つ大雄山最乗寺は、関東屈指の曹洞宗の禅寺です。杉の巨木に囲まれた参道を歩くと、空気がふっと変わる瞬間があります。ひんやりとした木の香りに包まれながら進むと、境内に置かれた世界一大きいとされる鉄下駄と天狗の像が出迎えてくれます。
夏には夕日の滝(落差約23m)で水しぶきを浴びながら涼を取り、秋には最乗寺の紅葉が杉並木を彩ります。足柄峠からは、天気の良い日に富士山が目の前に広がります。
大雄山駅前で出会った地元の方が、「最乗寺は紅葉もいいけど、新緑の時期がいちばんきれいだよ」と教えてくれたのが印象的でした。こうした何気ないやり取りが、足柄らしさだと思います。
松田町 ― 河津桜とハーブが香る丘の町

毎年2月下旬から3月にかけて、西平畑公園の丘一面がピンクに染まります。約360本の河津桜と菜の花、そしてその背景に富士山——桃色と黄色と白のコントラストは、早春のこの景色を見るためだけに訪れる価値があります。
春から初夏にかけては、隣の松田山ハーブガーデンでラベンダーやカモミールの甘い香りが風に乗って漂ってきます。
実は松田町は足柄茶の主要産地でもあり、丹沢水系の水で仕込んだ地ビールもある、知る人ぞ知るグルメの町でもあります。
山北町 ― 丹沢の自然と湖のアウトドア天国

足柄エリアで最も面積が広い山北町は、その大部分が丹沢山系の山林です。
丹沢湖では初心者でも楽しめるSUP(スタンドアップパドルボード)やカヌーが人気。湖面に映る山々の緑を眺めながら水の上を進む体験は、ここでしかできないもの。
洒水の滝は「日本の滝百選」にも選ばれた総落差約114mの名瀑。遊歩道を進むにつれて水音が近づいてきて、滝壺から吹き上がるミストを浴びると、夏の暑さを一瞬で忘れます。
山の奥には中川温泉が湧いています。武田信玄が傷を癒したとされる「隠し湯」。pH10を超えるアルカリ泉は、お湯に触れた瞬間にわかるとろりとした肌触りが特徴と言われています。
開成町 ― あじさいと田園風景が広がる、日本一小さな町

面積わずか6.55km²。神奈川県で最も小さな町ですが、6月になると5,000株のあじさいが水田の畦道を彩る風景は息をのむ美しさです。紫と水色の花が雨に濡れて輝く光景は、思わず足を止めて見入ってしまいます。
あしがり郷 瀬戸屋敷は、300年前の古民家を修復した交流施設。季節ごとのイベントが開催されていて、ひな祭りの時期には古いお雛様が所狭しと飾られます。
田んぼの向こうに丹沢山系が見える風景は、日本の原風景そのもの。
この景色を見ると、不思議と気持ちがほどけていくのを感じます。
大井町 ― 里山の暮らしを体験できる癒しの拠点
東名高速の大井松田ICがあり、足柄エリアの車でのアクセス拠点になっている町。
BIOTOPIA(ビオトピア)は「未病」をテーマにした大型施設で、ヨガ教室やノルディックウォーキングなど、心身のリフレッシュ体験ができます。丹沢を見渡す立地で食べる地元食材のランチは格別。
里山シェア大井松田では、田植えや稲刈りなどの農業体験プログラムに参加できます。都会では味わえない、指の間に泥の感触を感じる時間。
中井町 ― 富士山を眺める丘陵の小さな町
6つの市町の中で最も東に位置し、丘陵地帯に広がる静かな町。
中井中央公園の展望広場からは富士山のパノラマが楽しめます。天気の良い日には相模湾まで見渡せることも。
中井インターサーキットではカート体験ができ、家族連れに人気のスポットです。
6市町 比較サマリー
| 市町名 | 人口 | 代表スポット | ベストシーズン | 最寄り駅 |
|---|---|---|---|---|
| 南足柄市 | 約4万人 | 大雄山最乗寺・夕日の滝 | 通年(紅葉: 11月) | 大雄山駅 |
| 松田町 | 約1.1万人 | 西平畑公園・ハーブガーデン | 2〜3月(河津桜) | 新松田駅 |
| 山北町 | 約1万人 | 丹沢湖・洒水の滝・中川温泉 | 夏(SUP)・秋(紅葉) | 山北駅 |
| 開成町 | 約1.8万人 | あじさいの里・瀬戸屋敷 | 6月(あじさい) | 開成駅 |
| 大井町 | 約1.8万人 | BIOTOPIA・里山シェア | 通年 | — (車: 大井松田IC) |
| 中井町 | 約9千人 | 中井中央公園・カートサーキット | 通年(富士山: 冬) | — (車: 秦野中井IC) |
足柄の四季 ― いつ行っても、それぞれの楽しみがある
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足柄エリアの良いところは、どの季節に行っても、その季節ならではの楽しみがあること。ここでは、四季の見どころを簡単にご紹介します。
🌸 春(3月〜5月)
2月下旬から松田町の河津桜が咲き始め、足柄にいちばん早い春が来ます。菜の花の黄色とのコントラスト、そして遠くに見える雪化粧の富士山——早春のこの景色は、一見の価値があります。
5月になると新茶のシーズン。足柄茶の産地を訪ねて、お茶畑の中を歩くのも良い時間です。ハイキングも春からがベストシーズン。矢倉岳(標高870m)の新緑の中を歩く爽快さは格別です。
🏞️ 夏(6月〜8月)
6月は開成あじさいの里が見頃を迎えます。5,000株のあじさいが田園風景を彩る姿は、ため息が出るほど。
真夏は夕日の滝(落差約23m)で水遊びをしたり、丹沢湖でSUPに挑戦したり。西丹沢の清流沿いのキャンプ場で、都会の暑さを忘れる週末を過ごすのもおすすめです。
大雄山の杉並木に一歩入ると、木漏れ日が地面にまだら模様を描いていて、街の気温とは別世界の涼しさに包まれます。杉の香りが鼻をくすぐって、体の芯から涼しくなるような感覚です。
🍁 秋(9月〜11月)
秋のハイライトは、なんといっても大雄山最乗寺の紅葉。11月中旬、樹齢600年の杉並木に赤や黄色のモミジが映える風景は、この地を代表する絶景です。
丹沢湖周辺のドライブもこの時期がベスト。湖面に紅葉が映り込む景色は、写真好きにはたまりません。松田町ではみかん狩りも楽しめます。
❄️ 冬(12月〜2月)
冬の足柄は静かですが、それがいい。
松田山のイルミネーション「きらきらフェスタ」は、相模湾の夜景と光のアートが幻想的な冬の風物詩。中川温泉では、運が良ければ雪景色を眺めながらとろりとしたアルカリ泉に浸かることもできます。
大雄山最乗寺の冬の早朝は、凛とした空気の中で禅の静けさを味わえる特別な時間です。
吐く息が白くなる朝の参道を歩いていると、自分の足音だけが響いて、どこか背筋が伸びるような気持ちになります。
箱根旅行にプラスワン ― 足柄に立ち寄る3つの理由
箱根に行く予定がある方、もしくは箱根には何度か行ったことがある方に、ぜひ知っていただきたいことがあります。箱根の隣に、箱根の穴場ともいえるもうひとつの観光エリアが広がっていること。
| 比較項目 | 箱根 | 足柄エリア |
|---|---|---|
| 混雑度 | 年間2,000万人・休日は渋滞あり | 観光客少なく、ゆったり |
| 観光地化 | 高度に整備・商業施設充実 | 未開発の里山・素朴な魅力 |
| 温泉 | 多種多様な大型温泉施設 | 秘湯の中川温泉(pH10超) |
| 東京から | 約85分(ロマンスカー) | 約80分(小田急線) |
| 日帰り費用目安 | 5,000〜10,000円 | 2,000〜5,000円 |
| こんな人に | 定番の温泉旅行・美術館巡り | 静かな里山散策・自然体験 |
1. 混雑しない
箱根湯本の人混み、大涌谷の行列、芦ノ湖の渋滞——箱根の「あるある」です。でも、足柄エリアなら、同じように美しい自然や温泉を、ゆったりと楽しむことができます。大雄山最乗寺の参道を歩いていても、すれ違う人はまばら。その静けさが、贅沢に感じられます。
2. 本物の地方体験
箱根は素晴らしい観光地ですが、長年の開発によって「観光地然」とした部分も増えてきました。足柄は、まだ観光地化されていない分、日本の地方の「素」の姿に出会えます。地元のおばあちゃんが営む小さな食堂、田んぼ越しに見える丹沢の山並み、駅前の静かな商店街——。こうした箱根周辺の観光では出会えない、飾らない日本がここにあります。
3. 箱根から30分
はこね金太郎ラインの開通で、箱根の仙石原から南足柄まで約30分。箱根旅行の帰りに「ちょっと足を延ばして」立ち寄ることができます。箱根で1泊、足柄で1泊という周遊プランも、無理のないスケジュールで組めます。
まとめ ― 足柄びより、はじめませんか
東京から電車で80分。箱根から車で30分。
その距離感に、こんなにも静かで、こんなにも豊かな里山が広がっていることを知ったとき、きっと驚くと思います。
600年の禅寺に漂う杉の香り。日本の滝百選に数えられる名瀑のミスト。丹沢の湖面に映る空と山。田園の中の小さな町で、地元の方と交わす何気ない会話——足柄エリアには、一度の訪問では味わいきれない奥行きがあります。
このサイト「足柄びより」は、足柄エリアを歩く中で見つけた小さな発見——地元の人だけが知っているお店、季節ごとに変わる山の色、ふと出会う温かいやり取り——を、みなさんと共有したくて始めました。
個人的には、まず大雄山最乗寺の杉並木を歩いてみてほしいと思います。杉の香りと静けさの中を歩く時間は、きっとこのエリアの空気を体感する最高の入口になるはずです。
まずは気になった場所から、足柄びよりを始めてみてください。
足柄エリア基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エリア | 南足柄市・大井町・松田町・山北町・開成町・中井町(神奈川県西部) |
| 東京からのアクセス | 車 約75分(東名 大井松田IC)/ 電車 約80分(新宿→小田急→新松田) |
| 箱根からのアクセス | はこね金太郎ライン 約30分 |
| 日帰り | 東京から日帰り観光可。最乗寺+松田+開成で半日コース可 |
| ベストシーズン | 通年(春:桜 / 夏:滝・川・湖 / 秋:紅葉 / 冬:温泉・イルミ) |
| 所要時間 | 日帰り可。1泊2日がおすすめ |
| 主要駅 | 新松田駅(小田急線)、大雄山駅(大雄山線) |
| 交通系IC | Suica/PASMO 全路線対応 |
| 現金 | 小さな店舗・一部寺社は現金のみ。駅周辺にATMあり |
| Wi-Fi | 主要駅・コンビニで利用可能 |
※ 料金・営業時間は2026年3月時点の情報です。お出かけ前に公式サイト等で最新情報をご確認ください。
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